こんにちは!
出雲にあります温泉旅館、湯の川温泉 湯宿 草菴(草庵)のソムリエ&唎酒師、内田洋平(@izumo_sommelier)でございます。
ワイングラスを片手にするいつもの自画像ですが、今回は日本酒のお話しでございます!
ここ湯宿草菴(草庵)がございます島根県は酒造りの歴史が長く、出雲神話の伝承によりますと『素戔嗚尊が八岐大蛇に八塩折の酒を飲ませ、酔ったところを退治して櫛名田比売を救った』とされています。このことからこの地には神話の時代から酒造りの高度な技術があったとされ、それ故この島根県は日本酒発祥の地と言われております。
旧平田市(現在は出雲市に合併)には酒造りの神様である久斯之神を主祭神として祀った佐香神社(松尾神社)があり、酒造の神として酒造りに携わる人々からの信仰を集めています。
私ども草菴でもお食事の際にお召し上がり頂ける日本酒を数多く取り揃えておりますが、きっと皆様にお喜び頂ける新しいメニューのご用意が整いましたのでご案内させて頂こうと思います。どうぞ最後までご覧下さいませ!
目次
スタッフおすすめ!島根の日本酒5種飲み比べセット登場!
『旅行へ出かけた先の温泉旅館で和食を食べるので、せっかくだから地元の美味しい日本酒を飲んでみたい』
『でもたくさん種類があってどれを選んでいいか分からない!』
『どれかおすすめの日本酒ありますか?』
お食事の際のこういったお声は日々頂くご意見でございます。草菴では色々な種類の日本酒をラインナップしており、ご要望頂くお客様の声にお応えする形で日本酒選びのお手伝いをしております。
これまでは基本的にソムリエ&唎酒師である私が銘柄を選択しており、その特徴をスタッフの皆を通じてお客様にお伝えする形だったので、あくまでも私が選んだ中からのおすすめ、というご提案が主でございました。
しかし、こういったお食事中のお客様とのやり取りの中で、もっと草菴で働くスタッフとお客様の間でコミュニケーションを取ってもらいたい!と考えた結果…
1人1本日本酒を選んで貰おう!そしてまとめてお客様にお試し頂こう!というようになりました。そして出来上がったのが、草菴スタッフが選んだおすすめ日本酒5種飲み比べセットでございます。
草菴でお客様皆様方に接客を致します5名が、それぞれ自身が直接おすすめできる各銘柄を40mlずつ計200ml、一度に試せるセットとなります。
各銘柄について実際に選んだスタッフの話を中心に、私、内田洋平のコメントも交えながらご紹介させて頂こうと思います。
【主任:石飛 大史 おすすめ!旭日酒造 純米吟醸 出雲だより】
石飛『旭日酒造さんは出雲の酒蔵ということもあり、出雲出身である私は昔から知っていました。以前から気に入っていて、家族との食事会の時や今日は良い日本酒が飲みたいなと思った時に買っていました。
「出雲だより」は食事に合うので好き、というのはもちろんのことですが、名前が特に良いです。旭日酒造さんのほとんどの日本酒が、十旭日(読み:じゅうじあさひ)となっている中で、この出雲らしさを押し出し、更に出雲を詰め込んでいるネーミングが私の中の推しであります。
冷やも良いですが、燗して丸くなった感じの味わいもとても良いので、色々と飲み方を試して欲しい日本酒です。』
【ソムリエ&唎酒師:内田洋平コメント】
島根県独自の酒米である『改良雄町』を使い『島根K-1酵母』を用いて低温発酵にて醸した純米吟醸酒です。島根K-1酵母は元株である熊本酵母を昭和61年から培養し続けているもので、穏やかな酸と華やかで高い吟醸香、優れた発酵力からキレの良さが特徴の日本酒ができあがります。この出雲だよりもすっきりとして飲みやすく、食事に寄り添う姿はまさに食中酒としてふさわしい銘柄であると言えます。
【奥出雲出身:山田 陽子 おすすめ!奥出雲酒造 純米酒 奥出雲の一滴 Onedrop 改良八反流】
山田『私は普段日本酒をほとんど飲んでおらず、自分の好きな味わい等がはっきりとはしていませんでした。こんな私が日本酒をおすすめする事が出来るのであろうか、と悩みましたが、それならば地元のお酒から選ぼうと思い、そこからどの酒蔵にしようかと考えました。せっかくなので草菴で取り扱った事のない酒蔵が良いかと思い、奥出雲酒造さんのお酒に決めました。
酒蔵が決まったので次はどれか一本に絞らないといけませんが、どれも飲んだ事はありません。そこで日本酒に慣れていない私にも飲みやすい物はどれなんだろうと調べました。
「食中酒」としておすすめされている中で「奥出雲の一滴」というお米の違いによるシリーズが三種類あり、それぞれに合うお食事が紹介されていました。草菴ではお食事の際に提供するからこれにしてみよう!と実際に三本購入してみました。
自分がおすすめするにあたって飲んでみないわけにはいかないので、自宅で飲み比べをしました。それぞれ全く違う。飲み慣れていない私にも違いが分かりました。この三本の中で飲みやすくどんなお料理にも合いそうな物はどれかな?と数日飲み比べてみた結果、「純米酒 奥出雲の一滴 Onedrop 改良八反流」がすっきり飲みやすい!となり私のおすすめの一本になりました。
普段日本酒を飲むことが少ない私がおすすめするこの一本。同じように普段日本酒を召し上がる機会が少ない方にも是非お試し頂きたいです!』
【ソムリエ&唎酒師:内田洋平コメント】
こちらも島根県独自の酒米である『改良八反流』を使用した純米酒です。奥出雲酒造さんの数多くの日本酒の中でも新しいシリーズとなる『奥出雲の一滴』は、扁平精米という精米方法をとって造られた日本酒です。この精米方法を取ると、高い精米歩合でも雑味の少ない日本酒を造ることができますが、唯一の欠点が米が砕けてしまういわゆる砕米が起きてしまうことでした。しかしここで使用している改良八反流という酒米は非常に硬い米であることが特徴。唯一の問題をクリアにして造られたこの日本酒は旨味と香りの、広がりと引き締まりを明確に楽しむことができる逸品です。
【ソムリエール&SAKE DIPLOMA:峠 ゆきえ おすすめ!青砥酒造 蒼斗七星 特別純米65 木槽搾り】
峠『私が青砥酒造さんの【蒼斗七星 特別純米65木槽搾り】を選んだ理由は、すっきりとしていながらお米の旨味も楽しめて、余韻が特徴的で面白い味わいだからです。優しい甘味の後のピリッとした辛味と、口中が温かくなるような余韻がお食事中のアクセントにもなります。すっきりした味わいがお好きな方は冷酒で、より旨みや余韻を楽しみたい方は常温がお勧めです。
蒼斗七星シリーズの入門酒と言える一本で、淡い水色のボトルとスタイリッシュなラベルのデザインがとても素敵です。
青砥酒造さんではお酒が「生まれる瞬間」と「生まれ持った個性」を大切にしており、その想いがこの銘柄にも記載してある【木槽搾り】と【無濾過無加水】に込められています。
まず、出来上がった醪(もろみ)を搾って清酒と酒粕に分ける工程では、雫取り(※1)と木槽搾り(※2)の2種類の方法のみを用いています。
※1雫取りとは、醪を布の袋に入れて自然に滴り落ちる雫を集める方法です。
※2木槽搾りとは、醪が入った袋を木造の箱の中に重なるように敷き、上からゆっくりと圧力をかけて優しく搾る方法です。
これらの搾り方は機械で搾ったお酒に比べて雑味がなく柔らかい酒質になると言われています。
続いて、日本酒は雑味や色を取り除く為に炭濾過をする事が多いですが、個性となる旨みや香りも失ってしまう一面もあります。蒼斗七星は前述のように雑味を抑える搾り方を用いる為、無濾過でお酒の個性を保つ事が出来ます。
また、日本酒はアルコールの調整等の理由で加水をする事もありますが、精魂込めて造った日本酒をありのままで届けたいという想いから、無加水で仕上げています。
初めは何気なく見つけて手に取った蒼斗七星ですが、蔵人の方々の想いやこだわりを知って更に好きになりました。すっきりとした味わいの中にもインパクトがあり、個性が光る日本酒を皆様にも是非味わって頂きたいです。』
【ソムリエ&唎酒師:内田洋平コメント】
青砥酒造さんの特徴はなんと言っても、現在では手掛ける大工さんが殆どいないために使用している酒蔵も非常に少ない『木槽』を使用して醪を搾っているところです。特に特殊な大型の木槽を使ったこの酒蔵のお酒は、自然で優しい搾り方ゆえか、雑味が少なく柔らかい、そして特徴的な余韻を感じることのできる1本となっています。この余韻こそが個性的な蒼斗七星を形作る重要な要素であると思います。
【大社町出身:塚本 勇気 おすすめ!李白酒造 黒米仕込 華露~CARO~】
塚本『今回私がこの日本酒を選んだ理由としては、やはり見た目です。他の日本酒とは明らかに異なるピンク色のお酒で、飲み比べで提供した際に目を引くと思ったからです。かと言って見た目から味を想像すると甘口なのかなと思いましたが、そうではなくしっかりとした旨味のある日本酒であり、日本酒をよく飲まれる方でも満足できるのではないかと思い選びました。
決め手となった理由はもうふたつ。
ひとつは原料米に一部に草菴の近くにある荒神谷遺跡で作られた古代米の紫黒米を使用している点と、もうひとつは酵母には島根県の県花でもある牡丹から抽出した花酵母を使用していることから島根県と、草菴のあるここ斐川町に御縁があるお酒だなと思い選びました。
是非この「華露~CARO~」を見た目と味の両方で楽しんで下さい!!』
【ソムリエ&唎酒師:内田洋平コメント】
見た目のインパクトが凄い!鮮やかなピンク色が美しい純米酒です。その美しい見た目とは裏腹に、日本酒としての香味は素晴らしく、辛口で軽やかな口当たりとしっかりと旨味が特徴となります。鮮やかな色は原料米の一部に使用されている紫黒米のアントシアニン色素によるもの。それに加えて使用した牡丹の花酵母が華やかな香りを印象付けています。その絶妙な香味はワイングラスでもお楽しみ頂きたい銘柄です。ちなみに『華露』とは、唐の時代の第9代皇帝、玄宗が楊貴妃との豪華な宴会を楽しんでいる最中、この宴会の場に相応しい詩を聞かせよという命を受けた詩人李白が詠んだ一節からきています。その詩には楊貴妃を牡丹の花に例えた一節もあり、楊貴妃の機嫌はたいそう麗しかった、とのことです。
【大社町出身:長岡 康夫 おすすめ!板倉酒造 天穏 上撰 純米酒】
長岡『私がこの天隠上撰を選んだ理由ですが、数年前に家を新築するにあたって親戚や地区の方から新築祝いとして出雲のお酒を数種類頂いて、家が建つまでは御神酒に使ったり実家の床の間で飾っていました。
その当時、板倉酒造さんはまだ全量純米酒になっていない時期でしたが、頂いた日本酒を飲んだ際、天隠上撰は風味も旨味もしっかりあり美味しいお酒だなと感じました。
令和2年から板倉酒造さんは徐々に蔵で造る全ての日本酒を純米酒で造るようになり、令和4年からこの上撰も純米酒に切り替わりました。実際に板倉酒造さんの他の銘柄と飲み比べてみて自分にしっくりくる日本酒が上撰でした。
一升瓶は昔ながらのラベルですが、いわゆるカップ酒である1合のカップは島根のご当地キャラクター「しまねっこ」が印刷されたかわいらしいワンカップの商品もあります。』
【ソムリエ&唎酒師:内田洋平コメント】
その土地で長く愛されている酒は何か、それこそが真の地酒と呼べるものではないか、と私は考えます。そういった意味でこの天穏の上撰 純米酒はこの地でなければ楽しめない本当の意味での地酒であると言えます。実際にこの銘柄は県外へ出しておらず、脈々と地元の人々の生活や日常に寄り添い続けた日本酒であります。どの酒蔵でも見られるスタンダードな上撰クラスのお酒ですが驚くなかれ、なんと米と米麹と水だけで造られた純米酒であります。板倉酒造さんは近年、蔵で造る全ての日本酒を純米酒でとして造る全量純米に移行しました。従来の出雲杜氏が醸す酒の特徴である『芳醇』と『旨口』を存分に楽しむことができます。
島根の日本酒をお楽しみ下さい!
湯宿草菴でお楽しみ頂ける新しい日本酒のメニュー、いかがでしたでしょうか。
お越し下さいました際には是非ご用命の上お試し頂き、
『キミの選んだのはどれ?』
『あなたのおすすめのお酒が一番口に合ったよ!』
『試したけど、これを1合でもらいたいな!』
等々、実際にお席へお邪魔するスタッフたちにお声をかけてみて下さい!そこから生まれるコミュニケーションが、皆様の旅路を彩る思い出のひとつになれば、これ以上に嬉しいことはありません。
『みんな!好きな日本酒1本ずつ選んできて!!』という急な思い付きによる無茶振りに応えてくれたスタッフの皆に感謝をしつつ、ご覧頂いている皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
最後までご覧頂きありがとうございました!